立位体前屈(りついたいぜんくつ)ってご存知ですか?
立ったまま床に手がつくとかつかないとかいうアレですね。
太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)の柔軟性が問題だとも言われますし、実際にハムストリングスを伸ばすような工夫で手が床に届くようになる方もいます。
でもちょっと待ってください!
なんとなく工夫して手が床に届いてしまうと事の本質が見えなくなってしまいます!
というわけで、今回は立位体前屈を題材にストレッチのコツについてお話ししていきたいと思います。
手が床につくかどうかは体の硬さとは関係ない!
まずは上の図をご覧ください。「体が柔らかい人」と「体が硬い人」の立位体前屈、つまりストレッチの図です。
私は体が硬いので、向かって右の図のやり方だと思います。
実は立位体前屈で床に手がつくかどうかと、体の硬さはあまり関係がないんです。
え?! そういうことですか? 体が硬いから床に手がつかないんじゃないんですか?
実は筋肉の柔軟性だけに目をとらわれるともっと大事なことが見えなくなってくるんです。左の図の体が柔らかい人と右の図の硬い人の違いは何だと思いますか?
トレーナーも気付いてない!柔らかい人と硬い人の違い!
それは毎日ストレッチしているとか、筋肉の柔軟性の違いではないんですか?
もちろんそれだって体が柔らかい人と硬い人の違いではあります。でも体が硬い人の手が床に手が届かない理由をもっと数学的、もしくは幾何学的に考えると?(笑)
え?! 体の硬さの話なのに数学が出てくるんですか?
数学って言っても、そんなにお硬い話ではありませんけどね(笑)では、別の視点からもう一枚の図をみてみましょう!
先程の図に少し点と線を描き足してみました。両方とも同じように体を曲げていますが、左図と右図で体を曲げる支点の位置が異なっているのがお分かりになりますか?
右の図では手を一生懸命伸ばそうとしていますが、体幹は背骨の辺りから曲がっています。左の図では股関節から曲がっています!
そうするとどちらの方が床に手がつきやすいと思いますか?
体幹の部分も床に向かっているから左の図の方が届きやすいんですね!
そういうこと! ポイントを整理してみます。
立位体前屈で大切な2つのポイント
なるほど! 背中で曲げちゃいけないんですね!
そう! 左の図のように股関節から曲げるのが一番効率が良いんです!
一番効率が良いのは股関節なのに背中から曲げてしまうのは何故ですか?
股関節から動かすという運動ができなくなっている、というか忘れてしまっているということですね。そのために股関節周りの筋肉もかたくなっているんです。つまりハムストリングスが硬いから床に手が届かないというわけではないということです。
まず股関節が使えていないということですね。それと太ももの裏側のハムストリングスとの関係は?
ハムストリングスは股関節を動かすの筋肉の代表例なので、ハムストリングスが柔らかいということは股関節が動いているということなんです。逆にハムストリングスが硬いということは股関節が使えていないと言えるんです。つまり股関節が使えていないからハムストリングスも活性化されていないんですね。
つまり手が床に届かない理由の本質は筋肉の硬さではなくて、股関節が使えていないということなんですね!
そういうことですね。ですので、忘れている股関節の使い方を思い出してあげることが大切です。体が硬く、思い当たることがある方は、諦める前に股関節から曲げる練習をしてみてください。普段背骨から曲げている方がキチンと意識して股関節から曲げられれば、それだけで5センチや10センチは手の位置が変わるものです。
10センチもですか?! やる気が出てきました!
どうしても股関節からできない人は?
ここで押さえておきたいことは、背骨から曲げようとしているままでは、いくら立位体前屈を繰り返しても決して手が床に届くようにはならないということです。
ストレッチとか小細工的なテクニックで手が床につくだけでは問題が解決しているわけではないんですね!
そういうことですね! 大切なことはキチンと丁寧に股関節から曲げながら繰り返すということです。これは別の部位のストレッチでも同じことが言えます。理にかなった方法でやっていれば、体はこたえてくれるものですよ!
それでも股関節からの曲げ方がよく分からなかったらどうしたらいいですか?
当院のオンライン体操教室ゆるふわ身体づくりオンラインサロンでは股関節を使いやすくする体操も多くご紹介しています。ぜひ一緒にやっていきましょう!