筋トレより重視したいリラックスとバランス:はじめ鍼灸整骨院の視点

筋トレより重視したいリラックスとバランス:はじめ鍼灸整骨院の視点 姿勢・体幹バランス

先日おこなった「ストレス管理とパフォーマンス向上のための体幹バランスカリキュラム」(旧「ゆるふわ身体づくり」)の復習セッション中に、とても興味深い質問がありました:

「YouTubeとか見てると筋肉トレーニングで肩こりや腰痛が楽になるという指導者もいます。でも先生はリラックスとかバランスを重視します。どう考えたらいいんですか?」

これは非常に良い質問ですね!どのように考えたら良いのでしょうか?

筋肉の機能を理解する:生理学的視点

この質問に答えるために、まず筋肉の基本的な機能について考えましょう。生理学的には、筋肉は収縮と弛緩の二つの状態しかありません。収縮したあと弛緩することで準備状態に戻ります。

筋肉が「伸びる」とも思われがちですが、生理学的には筋肉に「伸展」はありません。「伸展」は誤解です。

筋肉の状態とリラックス

もう一度整理すると、筋肉には収縮と収縮したあとの弛緩、つまり収縮のための準備段階の二つの状態があります。そして、これらの状態は全て脳の命令によって制御されています。

筋肉が弛緩している状態は収縮のための準備段階なので、筋肉をリラックスさせられる人は筋肉を収縮させることができます。

一方でバランスが悪い姿勢や、筋肉が緊張しやすく肩こりが習慣になっているような人は、筋肉を弛緩させることが苦手なことが多いものです。筋肉が緊張しやすくなっている人は、筋肉をリラックスさせることが得意ではないのです。

このように筋肉を脱力させることが苦手な方が、筋肉を収縮させる筋力トレーニングを一生懸命やってしまうと、ますます筋肉をリラックスさせにくくなってしまうことが少なくありません。

それは、筋肉を収縮しやすい脳のプログラムになってしまっていると表現しても決して間違いではありません。

それでは「筋トレで肩こりや腰痛が軽くなる」というのは事実ではないのでしょうか?

指導者と運動が苦手な人の決定的な違い

改めて考えてみれば、スポーツ指導者やジムのトレーナーなどは、元々が身体運動が得意な方々がほとんどです。彼らは無意識に動いても、ある程度は力を抜くことが自然にできています。だから運動が得意なのです。

筋トレをしても力を抜くことができるくらい運動を得意とする人からは「筋肉トレーニングすれば肩こりや腰痛が楽になる」という発言が出てくるのです。

これは確かにその通りです。決して間違いではないのですが、全身の緊張をリラックスさせることが苦手な方は、この言葉を鵜呑みにしてはいけません。

筋トレより優先させるべきこと

優先順位としては、筋肉をリラックスさせてバランスを整えられるようになってから、筋力トレーニングをするというのがはじめ鍼灸整骨院で考えるセオリーです。

もし筋トレをおこなうなら、筋トレの後でこの筋肉がリラックスしている状態まで戻すという真の意味でのクールダウンが重要だと考えています。

私自身は、筋トレをすると筋肉を緊張させるクセが強くなってしまうのが分かっていたので、25年以上前に筋トレをやめた(もしくは休止した)わけです。

そして、もう一つ問題があります。

筋肉トレーニングと身体コントロールの違い

筋肉トレーニングでは、対象となる筋肉に特化したトレーニングをすることが多いです。ある筋肉だけを鍛えて見栄え良く太くしたいのでしたらその方法は正解です。

しかし、スポーツや芸術、ビジネスなど多くの身体運動(芸術やビジネスも身体運動ですね!)では、複数の筋肉が関与する身体コントロールが求められます。

通常の筋力トレーニングはそれぞれの筋肉を対象にすることが多いため、専門分野で求められる身体コントロールの条件を満たしていることが少ないのです。

だから身体運動が専門のスポーツ選手やアスリートなどでも「筋力は強くなったけどパフォーマンスが落ちた」ということが起こり得るのです。

応用が効く身体コントロールを習得するためには、個別の筋肉ではなく重心バランスや身体コントロールという方向から身体づくりを考えることが大切です。

そして、さらに重要なことがあります。

指導者やトレーナーの落とし穴

スポーツ指導者やジムのトレーナーの方々は、一般の方に比べて身体コントロールが上手ですが、それでも筋肉をリラックスさせることについては専門家ではないという事実です。

なぜなら、自然にできてしまうが故に、習得が必要な技術として課題化してトレーニングされることが少ないからです。

解剖学的にみれば、人の身体には骨があり、筋肉があり、内臓があります。多少の個人差はあっても、その造りはだいたい同じです。

さらに、一人の人間の体は物理学的な存在である以上、必ず重心もあります。

身体との向き合い方の基本と科学化の方向

重心があり、解剖学的に同じ構造であるなら、どれほど違って見えても、身体との向き合い方には基本があります。

重心バランスとリラクセーション。

これを出発点にするなら、どのように応用が広がっても良いのです。そして、科学的に考える際にも、重心バランスやリラクセーション能力の有無(もしくは高低)を基本に考察を積み重ねることが重要です。

しかし、筋力だけが注目されると、筋肉を収縮させ全身を凝り固めることに一生懸命になってしまいがちです。

「いろいろな人がいる」という考え方は素晴らしい気づきですが、全身を緊張させることを出発点にしてしまうと、生理学的には身体の機能的な可能性を半減させてしまう結果になると結論が出てしまいます。

重心バランスやリラクセーションを重視しないのは、もったいないと思いませんか?

そんな風に重心バランスとリラクセーションを大切にするためにはポイントがあります。

物理的身体に感覚的に向き合う3つの方法

  1. 最初は外側や前側の緊張や感覚が強いことを自覚すること。
  2. 次に、感覚が強い部分の緊張をリラックスさせること。
  3. 外側や前側の緊張がリラックスしてきたところで、内側や重心バランスの感覚を高めていくこと。

まずはこれらのステップがスタートです。

特に、高校生や大学生くらいの若い方々にも、「姿勢や基本動作の基礎が間違っていると、筋肉や関節を痛めやすくなったり、パフォーマンスが向上しにくくなることがある」ということをぜひぜひ頭の片隅に置いておいて欲しいです。

身体コントロールの可能性

ここまでお話ししたことで、復習セッションの受講生さんも筋トレの謎が解けたようです。

筋肉との向き合い方は、筋力だけではありません。

そのことを知ることで、身体コントロールの可能性が大きく広がります。

できることからで構いません。まずはあなたも自分の緊張に気づくところから始めませんか?

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