はじめ鍼灸整骨院では『東洋医学とストーリーで体の悩みを読み解く』ことを大切にしています。
体にかかっている無理や負担、ストレスを放置していたら傷口にヤスリをかけ続けているようなものですよね?
そのままでは、どれほど鍼灸に一生懸命通われても、痛みや不調が軽くなるとは考えにくいのです。
まずは、痛みや不調を軽くするためには、まずはその体にかけている無理や負担、ストレスを見つけることが初めの一歩。
その無理や負担、ストレスは、立ち方や歩き方など姿勢の悪さかも知れませんし、重いものの持ち方や除雪作業などの習慣やクセかも知れません。
しかし、これらを見つけることができれば、あなたの痛みや不調の半分は軽くなったも同然です!
そのためには患者さんの協力が必要不可欠になります。
この記事では、はじめ鍼灸整骨院ではどのように身体のお悩みを東洋医学とストーリーで読み解いていくのかお話していこうと思います。
今回は、先日も取り上げた70代女性。
涙が出るくらいとっても嬉しかったお話です。
私には夢がある
私には夢があります。
どこぞの大統領候補のようになってしまいましたが、その夢があったからこそ獣医師が鍼灸師の資格まで取ってしまったところがあります。
大袈裟に言えば、人生を変えてしまった夢。
そんなふうに表現することもできるかも知れません。
その夢とは『しなやかな体軸で人生にワクワクを』。
大学時代、武術の稽古を始めた私。それまで筋トレもストレッチも数年間継続してきていたのに師範の動きには真似事でも近づける気が全くしませんでした。
だから筋トレをやめました。粗雑な筋トレは身体運動の細やかな感覚を消してしまうんです。筋トレと感覚を両立させるだけの才能は自分にはありませんでした。
その代わり、師範の動きを本気で観るようにしました。外観ではなく師範が何を感じているのか。可能な限り師範の感覚をトレースするような稽古を始めました。
そうしたらほんの少しずつ師範の動きが見えてきました。とても面白くて夢中になりました。それこそ獣医師が薬や手術ではなくて東洋医学を志してしまうくらいに。
身体や動きの質が根底からひっくり返るという経験を何度も何度もしました。
その度に自分の中の「武術」という体系を全て構築し直さなくてはなりませんでした。
その苦労もただただ面白くて、そこからの数年は飛ぶように過ぎていきました。
そして気づいたのです。
「これは武術だけの話ではないんだ」
しなやかな体軸で人生にワクワクを
武術を始めた当初、私は武術を学び習得するためには武術を学ばなくてはならない。当たり前のように硬くそう信じていました。
しかし動きの質が変わり、稽古の内容が変わることでその考えを改めざるを得なくなりました。
動きの質が変わること、技の質が変わること。
実は、これらの質の向上だけを目指すなら、武術の動きは全く必要ありません。ただ自分の身体や姿勢、動きを注意深く観察するだけでいいんです。
年齢も性別も関係ありません。専門分野がビジネスだろうとスポーツだろうと関係ありません。日常生活でも家事でも何でもいいんです。ただご自分の身体に目を向けることさえできれば、どなたにもできること。
そこが初めの一歩です。
近い未来にどうなるか分かりませんが、現時点では私たちは何をするにも自分の身体が必要です。
だから身体が変わり動きが変われば、あなたの日常は全て変わります。当たり前ですね。
全身の緊張や違和感は軽くなります。
体が軽くなるので疲れにくくなります。
動きのコントロール能力が上がるので仕事や趣味も上達します。
こういうお話をお伝えしたくて私は鍼灸師になったのです。
手術や薬ではなく、身体や姿勢や動きを通して健康や人生や未来をお伝えしたかったのです。
「え~、本当にそんなことあるの?」
もちろん疑う向きもあるでしょう。
学校の体育で習うような一般的なお話ではありませんからお気持ちは分かります。
前振りが長くなりましたが、今日あった患者さんとのお話はそんなあなたにこそお読みいただきたい内容です。
受け入れて工夫して
前回来院された際は、立ち方のポイントを間違って覚えていていつもと違う腰や背中の張り感や違和感が出ていたこの患者さん。
その日は来院されて開口一番、さも得意そうに「今回は調子いいの!」と仰います。
こちらまで笑顔になりながら「前回のあと、どうなりましたか?」とお尋ねしました。
すると患者さんは立ち上がって今、ご自身がやっている歩き方の練習法を見せてくれました。
私がお伝えしたやり方そのままではなく、ご自身で工夫を加えてご自分なりの体操を編み出していたのです。
頭の上で両手を合わせるようにしながら歩くというご自分で工夫された動きを見せてくださりながら、身体や動きに変化が感じられたということでした。
ご自分の体幹の重さが座骨に乗るような感覚が得られたのだそうです。
身体の重さを感じられるためには筋肉がリラックスしていなければなりません。
身体の前側ではなく座骨という後ろ側の感覚が生まれていました。
これらの動きが、重心バランスや体軸の感覚を育てやすい頭の上で手を合わせるという動きに引っ張られて統合されていたんですね。
それらのことが見てとれた私は、「素晴らしい!」と手放しで賞賛してしまいました。
「今の時点でできる100点!」
これらの感覚は、外見的に同じ動きを真似たからと言って簡単に感じられるものではありません。ただ教わった体操をやればいいという話でも、決められた回数をやればいいという話でもないんですね。
自分の身体に目を向けるということが何より大切なんです。
どれができて、その上で身体や動きに変化を感じられた。素晴らしいですよね。
当たり前ですが、はじめ鍼灸整骨院では施術の際に武術を指導するということは一切ありません。
それなのに患者さんがこのような動きの変化を得られたという事実がとても重要なんです。
もう少しお話を伺いたくて、改めて質問してみました。
何年かかっても
私「歩き方の質が変わって何を感じられましたか?」
患者さん「腰も背中もめっちゃ楽! 全然痛くない!」
私「本当に変わりますよね。自分で自分を締め付けるような、苦しめるような立ち方・歩き方をしてたのが分かりますよね」
患者さん「本当に立ち方や歩き方が間違ってたんだなって分かった。こんなに楽なんだからみんなもやればいいのに」
私「そう思って私も一生懸命にお伝えしてるんですよ。でもなかなか伝わらないんですよね」
患者さん「そう言えば私も初めて来院してから五年くらい経ってるわ。最初からちゃんと教えてくれてたのに五年もかかっちゃった」
私「できるようになると分かりますよね」
患者さん「最初は何言ってるんだろうと思ってたけど、実際に分かってみるとその通りだった!」
トレーニングの真実
そうなんです。当院では、立ち方・歩き方についてはなるべく早い段階で答えをお渡ししています。
でも最初は、何を言ってるか分からないものです。
それらを体で理解して、腑に落とせるようになることが大切なんですね。
その過程が稽古であり、トレーニングなんです。
結果として体で理解できたという事実に価値があるんです。
ですので、かかった時間は気にしなくて大丈夫です。
時間がかかっても、気づくときは一瞬の閃きだったりします。それでいいんです。
私「私自身も武術を初めてそういう動きの質の変化を感じるまで数年かかってますよ。それでいいんです。というか、続けてくださって本当にありがとうございます!」
こういう会話があって改めて私は自分の夢を思い出しました。
この瞬間もまた、私の夢が一つ叶った瞬間だったんです。
本当にありがたいことだなと、涙が出そうなくらいしみじみ感じ入ってしまいました。
そしてこの患者さんはもう一つ大切なことを思い出させてくれました。
身体が変わると私が変わる
患者さん「仕事するときも全然つらくない!」
私「そうなんですよ、身体や動きが変わると気持ちとかココロまで変わるんです」
患者さん「どういうこと?」
私「腰が痛い痛いと思いながら仕事行くとどうですか?」
患者さん「そういうときは仕事に行きたくない」
私「腰が楽ならどうですか?」
患者さん「全然気にならない。あ、ホントだ。気持ちまで変わってる!」
身体とココロの関係
先程、身体や動きの質が変わると、緊張や違和感、疲労感まで変わるとお話しました。
でも本当は、それだけではありません。
感情やココロ、思考能力にまで影響を与えているんですよ。
こうお伝えしたところ、この患者さんはこう仰ってくださいました。
「やっぱりみんなやればいいのに!」
放置すると身体もココロも硬くなる
この患者さん以外にもこのような変化を感じられる患者さんはたまにいらっしゃいます。
でも皆さん、安心されるのか、変化を感じると体操やケアをやめてしまわれる方が多いんですね。
でも身体もココロも放置すると、緊張して硬くなるようにできています。
そのまま体操を続けていれば身体は良い状態を維持できるのに、やめてしまうなんてもったいない!
というワケで最後にこんなことをお伝えしてみました。
「実は私自身も、最近また立ち方や歩き方が少し上手になりました。ちょっとだけ進化したんですよ!」
するとその患者さん、目を丸くして答えてくださいました。
「先生って二十年も三十年もやってるんでしょ?! 身体ってそんなに深いの?!」
そして「私は今感じたこの変化を大事にするわ」と仰いました。
私はホッとして「そう、それこそが大切なんです! 自分のペースで一歩一歩ステップを進めていけばいいんです。今回感じた身体の変化は一生大事に続けていただいて良いレベルだと思いますよ」とお伝えしました。
きっとこの患者さんは、これからもご自分の身体に向かい合ってくれるでしょう。
そう思わせてくれた出会いに、改めて心から感謝した時間でした。