膝や股関節が痛くて検査をしてもあまり悪くないと言われる。
それでも痛みは軽くならない。
そんなお悩みで来院される方が増えています。
階段を上り下りしたり、腰を落として屈んだり、正座をしたりするときの痛みはなかなかどうして軽くなりにくいものです。
そんなときに筋力低下を指摘されて指導されることが多いのが、太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋の筋肉トレーニングです。
椅子に腰掛けて膝を伸ばしたまま脚を持ち上げるリハビリをしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
あのエクササイズも大腿四頭筋の筋トレの一つです。では、なぜ大腿四頭筋の筋トレをしなくてはいけないのでしょうか?
なぜ大腿四頭筋が膝や股関節を痛めるのか?
大腿四頭筋が全身で一番大きい筋肉だから?
う〜ん、惜しい!
大腿四頭筋で体を支えているから?
大腿四頭筋の筋トレを指導される理由はそれで正解です!
大腿四頭筋で体を支えているから、筋力が弱くなると膝関節痛や股関節痛が出やすくなる。だから、大腿四頭筋の筋力トレーニングをして痛みを緩和しましょう。そういう考え方です。
でも、ここで一つ大きな問題を提起します。
本当に大腿四頭筋で体を支えなくてはいけないのでしょうか?
関節を支えるために必要な筋肉の役割とは?
ここで一つ簡単な実験をしましょう。未経験の方はぜひ実際に体を動かして実感してみてください。
まずは肘を直角に固定してみてください。
そう言うと、ほとんどの方が伸びた肘を曲げて肘を直角にします。このときに使われるのは力こぶのの筋肉である上腕二頭筋です。
でも肘を直角にするだけなら、深く曲げた肘を伸ばして直角に固定しても良いはずですよね?
ここには2つの気づきが隠れています。
膝と股関節をスムーズに動かす筋肉の本当の役割
一つは肘を伸ばして固定するときには上腕二頭筋、肘を曲げて固定するときには力こぶの反対側にある上腕三頭筋という筋肉が使われるということ。
もう一つは肘を固定すると言われたときに多くの方が肘を曲げて形を作りますが、逆に肘を伸ばして固定する方法があるということ。コロンブスの卵と同じで、ここには思い込みが隠れているということ。
これを立位で体を支えるという身体運動に当てはめて考えてみましょう。
大腿四頭筋の筋トレが必ずしも痛みを予防しない理由
立つという運動を筋肉で考えたときに、大腿四頭筋で体を支えている人がとても多いのは事実です。
だからこそ大腿四頭筋の筋トレが指導されることが多いのです。
しかし立つとき、体を支えるときに大腿四頭筋を使わなくてはいけないかというとそんなことはありません。
大腿四頭筋の反対側についている太もも裏側の筋肉(ハムストリングス)で立つという選択肢もあるのです。
同じように立てるなら、太ももの前側で立とうと裏側で立とうとどちらでも良いのでは?
もしかしたらそう考える方もいるかも知れません。
大腿四頭筋の知られざる3つの事実
ところが、疲れやすさ、痛みの出やすさ、動きやすさも含めた健康並びにパフォーマンスの向上を考えると、大腿四頭筋とハムストリングスのどちらでも良いとは間違っても言えません。
特に膝や股関節の痛みの予防や緩和を目的とするなら尚更です。
そこまで踏まえて、大腿四頭筋で立ったり歩いたりするときの特徴を見ていきましょう。
1 大腿四頭筋で体を支えると転びやすくなる?!
足の親指の付け根の母指球で体重を支えるという考え方があるので誤解されている人も少なくありませんが、重心バランスが前にして体を支えるのはあまり得策とは言えません。
体を前傾させるということは、足裏で体を支える面積がつま先に集中することを意味します。すると荷重面積が狭くなるので転びやすくなります。
スポーツなど一瞬のパフォーマンスを向上させるために前重心になることはもちろんありますが、一瞬が過ぎた後に元に戻せることが重要なのです。
2 大腿四頭筋で体を支えていると膝や股関節が痛みやすくなる?!
体を支えているということは、筋肉を緊張させているということでもあります。
常に重心バランスが前にある場合には大腿四頭筋で体を支えることになるのですが、そうすると常に大腿四頭筋を緊張させているためリラックスさせることが不得意になってきます。
一方で階段を上り下りするときや屈んだり正座したりするときには、膝を深く曲げることが必要です。これらのときには大腿四頭筋を伸ばすことが必要になるのです。
しかし大腿四頭筋が頑張って緊張しているところを、無理に曲げて伸ばすことになるために膝や股関節のまわりに負担がかかりやすいのです。
そのため大腿四頭筋で体を支えていると膝や股関節が痛みやすくなるのです。
3 大腿四頭筋は歩くときに体を前進させる筋肉ではない?!
歩くときに大腿四頭筋の筋力が強くないといけないという考え方もあります。しかし大腿四頭筋は太ももやスネを前に振り出す筋肉です。このときには足は地面に着地していないということを改めて確認しておく必要があります。
しかし体が前に進むのは、足を着地して太ももやスネが後ろに送られるタイミングです。
太ももやスネを後ろに送る働きをする筋肉の筋力を問題にするならともかく、空中で前に振り出す筋肉を問題にするのは理に適っているとは言えません。
このように見てくると、膝や股関節の痛みを予防したい、緩和したい。その意味で正しい姿勢や歩き方を身につけ習得することを考えるなら、大腿四頭筋から頭を切り替える必要があることがご理解いただけると思います。
膝・股関節を痛めないための立ち方・歩き方の3つのコツ
言い方を換えれば「筋力低下を疑う前に立ち方や歩き方を考えたいですね」ということです。
本来は体を支える筋肉は太ももの前側と後ろ側の筋肉だけでは語り切れないのですが、まずはシンプルにこれだけでも考えていただければと思います。
膝・股関節にやさしい、正しい立ち方・歩き方のポイントは以下の通りです。
- 体重のかけ方:つま先だけでなく踵にも体重をかける。
- 体を支える筋肉:太ももの裏側で体を支える。
- 歩き方:前に出すことではなく後ろに送ることを意識する。
もし膝や股関節にやさしい立ち方や歩き方をキチンと学んで習得したい方はお気軽にはじめ鍼灸整骨院までご相談くださいね。