当院では必要以上に全身を緊張させて筋肉や関節を動かしにくく疲れやすくさせてしまっている方を、錆びた自転車予備軍と呼んでいます。
なぜ筋肉や関節が動かしにくくなってしまっているのかというと、ご自身に自覚がないところで筋肉を緊張させ凝り固まっているからですね。
そのうちの大きな理由の一つは、長年の習慣やクセのせいもあって重心バランスに則った姿勢や基本動作が崩れてしまっているから。
その解説は下の記事で行いました。
この記事では、錆びた身体のメンテナンスを筋肉という視点から見ていきたいと思います。
錆びついた身体では、関節まわりの筋肉が緊張しています。
実は関節まわりの筋肉が緊張していると、筋力が思うように発揮できないのです。
動く関節と動かない関節
筋力を発揮するときには対象となる関節を動かす筋肉が収縮する必要があります。
その結果、関節が動くことで筋力が発揮されるのです。
関節にある動きをさせたいと考えるとき、筋肉というのは関節を動かす筋肉(主動筋)とその動きに抵抗するような動きをする筋肉(拮抗筋)という真反対の動きをする2つの筋肉を考えます。
ところが主動筋と拮抗筋という反対の作用をする両方の筋肉を同時に緊張させてしまうと関節が固定されてしまいます。
関節が固定されて動きが悪くなっている状態では、どれだけ筋力を発揮させて関節を動かそうとしても思うような身体コントロールができません。
つまり関節を動かすためには、その動きで使うべきでない筋肉をリラックスさせ、使うべき筋肉を収縮させる必要があるのです。
メリハリのついた筋肉の使い方をするための条件
このような状態をメリハリのついた筋肉の使い方を呼んでいるのですが、実はそのような筋肉のコントロールができるようになるためには一つ条件があります。
それは、ある程度は姿勢が良く重心バランスが整っている必要があるということ。
あまりバランスが悪いと、使う必要がないはずの筋肉まで収縮させないと姿勢を維持できなくなってしまうんですね。
重心バランスや姿勢が整って姿勢を支えるのに必要がない筋肉をリラックスさせられるようになると、動きのタイミングを見て使うべきでない筋肉を使わずに使うべき筋肉を使う、というメリハリのついた身体コントロールができてきます。
このような身体コントロールを習得するための初めの一歩は、まず自分の身体の状態に気付くこと。次いで全身をリラックスさせながら重心バランスを整えること。
その次にようやく、メリハリのついた筋肉の使い方の段階というように効率よく学習するには、習得する順序を考える必要があるんですね。
ガムシャラにやって、それでもなんとかなってしまう方というのは才能のある方です。
私を含めた大多数の一般の方が効率よく学び上達するためには、やっぱり成果を出しやすい努力をするための学習順序、つまりカリキュラムが必要なんです。
ここではこのことだけ押さえておいてください。
最後に、立つときや歩きときにできるだけ頼って欲しくない筋肉をご紹介しようと思います。
頼るのを最初にやめて欲しい超意外な筋肉
メリハリをつけて使って欲しい筋肉の中でも最も重要な筋肉です。
もったいつけずに言ってしまうと、それは太ももの前側の大きい筋肉。大腿四頭筋です。
ここで「え?!」という言葉が出た方は身体や運動についてかなり勉強されてきた方でしょう。
なぜならば、この大腿四頭筋こそ全身で最大の筋肉であり、関節が痛くなったり、歩けなくなったりしたとき真っ先に筋力トレーニングを推奨される筋肉だからです。
スポーツジムでもリハビリでも大腿四頭筋の筋力はまだまだ重要視されています。
だから「大腿四頭筋を使わないで」と言われると戸惑ってしまうのです。
しかし大腿四頭筋に頼って立ったり歩いたりすると、特に股関節や膝関節を凝り固めてしまいやすいことが分かっています。
痛みが出やすくなったり、疲れやすくなってしまうんですね。
杖なしでは歩けなかった80代女性に起こったこと
細かいメカニズムの解説は別の機会に譲るとして、ここでは一つの事例をご紹介するのにとどめます。
それはある80代女性のお話です。
この方は、家の中でも杖をついて歩いていました。
しかし当院をご利用いただくようになり、体操や身体の使い方を学ぶうちに杖を使わずに歩けることが多くなったのです。
もちろん筋トレも、大腿四頭筋を使うことも一切お話していません。
80代になると筋トレをしても筋肉がつきにくくもなっています。
それなのに「杖を使わずに歩けるようになった」ということは、筋力にも大腿四頭筋に頼るだけでもない身体コントロールの存在を示唆しています。
驚くに値することだとは思いませんか?
でも実はこれ、シニアの方だけに重要な話ではないんです!
放置すると起きやすい問題
大切なのでもう一度お話しすると、80代女性が、杖を使わずに歩けるようになったという事実は、筋力や体格に頼らない身体コントロールがあるということです。
錆びた身体のメンテナンスが、年齢や性別に関係なく大切であることを教えてくれます。
例えば、あなたにはこんなお悩みはありませんか?
- 動きが悪くなって疲れやすくなる
- 思うように身体が動かず転んだりケガしやすくなる
- 筋肉を固めたまま動かすので筋肉や関節を痛めやすくなる
- 効率よく運動エネルギーを利用できないので多くの筋力が必要になる
- 理に適った身体コントロールができないので練習しても上手くならない
こんなときにはぜひ錆びついた身体をメンテナンスすることを考えてみてください!